なんだか、シュンとしている母。
お隣の、ちょっとお品のよいお婆様が
懸命に母に話しかけていました。

ママ、どうしたん?

あら、アナタ、どうしよう、アタシね、失敗
しちゃったの。

なーんだ、そんなことか。いつものことで、
初めての失敗ではあるまいし。

施設のスタッフさんにも、母は小さくなって、
すまながっておりました。

アナタね、アタシ、あんなにお腹を壊したの
なかったのよ。
それもね、公衆の面前だったのよ。

大丈夫ですよ。
部屋だったから、どなたもいませんでしたよ。

母はショートのフロアを、スタッフさんに、
車椅子を押して貰い、エントランスまでの間、
すまないとずーっと言い放し。

車に乗っても、しきりに申しておりました。


さて、帰宅後、洗濯をしようとバックから、
洗濯物を出して、母がしきりにすまながった
理由がよくわかりました。

簡単なベン君出動ではなく、リハパンをはみ
出してズボンまでベッタリ。
大量だった形跡が・・・・。

靴下は捨てました。
ズボンは真夏用のグレー、これ1本。
洗ってまた、履かせるかな。
どうせ、大汚れでも忘れるんだから。

ゴム手袋をして、バケツで洗いました。
しばらく、茶色の水ばかり。

冷房のないお風呂場で、ゴム手袋のなかは、
水浸し。
でも、茶色の水が透明になるまで、そして、
浴室の床を漂白剤で洗うまでは、我慢。

脱臭効果のある洗剤を使いましたが、なんか
臭い。そこで、浸けておきました。


汗だくになって、始末をし、洗濯物を干して、
冷房の効いた部屋に戻ると母が申しました。

どうしたの、なかなか、戻ってこないから。
そんなに買い物が大変だったの?

何を言ってねん!
お風呂場で洗濯しているからと言っておいた
やんか!!

あら、何かしたの?


過去の経験からして、大量の下痢は脱水症状
の一つ。
鬼娘でも心配しました。
しかし、失敗したことを忘れてしまい、元気
いっぱいな母。
疲れた・・・。

あーっ、そうだ!靴も洗わないと。
たぶん、足元が水たまりだっただろうから、
靴もモロだったに違いない。

黒い靴は雑巾で拭くと茶色になりました。
ザブザブ洗って、干して・・・・

なんでもかんでも、洗えるものではないと、
全部捨てることになるんですね。

003


鼻先がなんだか臭い。
高齢者の独特のにおいの元は・・・・