アタシは、知らない間に、ここに連れて来られ、
置き去りにされたのよ。
集団リハビリから戻り、食堂のいつもの所に、
母を座らせました。
片付けるために母の部屋に行こうとしたとき、
アタクシの背後で、お隣のKさんに愚痴る母の
大きな声がしました。
おっかさん、そうなんや。
骨折して入院した後、老健(介護老人施設)へ
移るときも、そして、今の特養(特別養護老人
ホーム)へ移るときも、あたしは懸命に何度も
説明を繰り返してきたのに。
知らぬ間に連れて来られたんや。
ほんま、施設が姥捨て山って感じなんやね。
はいはい、アタクシは、やっぱり鬼娘なんよ。
お隣のKさんは、母が愚図ると穏やかに母を
諭してくれています。
あたし達はね、ここにいるのが一番いいの。
一緒に泊まりましょ。
母にKさんのような心境が生まれるのでしょうか。
置き去りにされたと感じないようにと、一日
おきで、面会に来たときもありました。
でも、それも、もう、しんどい。
在宅介護ではないのに、しんどいと言うのは、
贅沢なことですが。
母の居る横須賀は、崖の多い地形です。
幸い、母の施設はちょうど、盆地のように、
緩やかな小山に囲まれています。
神奈川県がゲリラ豪雨に襲われたようです。
でも、母のところは川も崖もないので、安心
していられます。
おっかさん、強風に倒れそうな我が家より、
ずっとそっちのほうが、安全や。
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