母の施設(特別養護老人ホーム)には職員の
お子さんのための保育室があります。

保育室の入り口は、シーズンに合わせた飾り
つけをしていて、通るときに、母に声をかけ、
季節を自覚させています。


クリスマスと分かる飾りになったので、母に
言いました。

ポインセチアの折り紙やね。
ママも、昔はこうやって教室を飾りつけをした
んでしょ?

母は若い頃、幼稚園の教諭でした。

この施設に入所した2年前も、自らそう言って
いましたから。


そんな大昔のこと、忘れちゃったわよ。

吐き捨てるように、母は言いました。

ほんとに忘れてしまったのか、あるいは、
ポインセチアの折り紙が、もう折れないと
言いたかったのか・・・。

それ以上、言うと、もっと母のおヘソが曲がり
そうなので、やめました。

そう言えば、この頃は、あんなに言っていた
昔の幼稚園のことを言わなくなりました。

やはり、記憶から、先生と呼ばれたことが、
ポロポロ、抜け落ちてきているような気が
します。

直近の記憶は、すぐに抜け落ちてしまう。
昔の記憶も、少しずつ、忘れていくようです。

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おっかさん、娘のことも忘れてもかまへんよ。