施設(特別養護老人ホーム)の母の部屋を
ノックして入ると、悲鳴に近い母の声。

あー、アナタ、来てくれてよかったわ。
アタシね、今日一日、何も食べていないのよ。

母は、少々目が吊り上げ、口を尖がらせて
申しました。

ウソこけ、おっかさん。


いやいや、朝から食べていないってことは
ないと思うよ。
じゃあ、ちょっと聞いてくるね。

あの人達は、ウソをつくのよ!

おっかさん、何ちゅうことを!!


アタクシは、聞くのではなく、今日の献立を
見に行きました。

ヒレカツ、胡瓜とトマトのサラダ、茄子の
胡麻よごし、鰯のつみれ汁。


お昼は、ヒレカツやったんよ。
ママが全部食べたのを見てたよ。

あら、そうなの。
やーね、アタシ、忘れてしまったんだわ。

いいやん、忘れてもいいし、そのままでええんよ。

意外にあっさりと、忘れてしまったことを認める
なんて、まあ、珍しいこと。

008

今日は母の日。

介護友の方々がスイーツを持って面会に行く
とのこと。

アタクシも、練り切りを持って行きました。

母の日とも何も言わずに。



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