その言いぐさだと、アタシが死ねばアナタは
自由になるというわけね。


そうや、その通り、おっしゃる通り。
で、いつ、そうなるわけ?
こころの奥底では、そう言うアタクシが存在
しております。


いくら母が認知症とは言え、やはり口に出し、
言うことはございません。



ちゃうやろ、言いたいんは、行きたくないと
言っているデイケアに週に一日行ってくれる
だけでいいって、さっきから言うてるやん!


母と話をすると、ついつい、結論じみたこと
はここに行き着きます。


しかし、これが結論だと思うのは、アタクシ
だけ。



アタシは一人で暮らせるのよ。


と母が会話の振り出しに戻してしまい、エンド
レスになってしまうのです。


午前中に、このような会話が始まってしまい、
今回は、久しぶりに、ずばり!


アータさ、認知症なんや。だから、一人では
アカンねん!!!


おお!目が三角になり、口が尖がりましたで。



アタシがどうして認知症なのよ!!


だって、診断書にも書いてあるしね。
だいたい、アータ、この頃毎日言うのは何や
と思てるねん。「朝ご飯を食べてない」やで。
それって、認知症やねん。


核心を突いたというか、どうも、「朝ご飯を
食べていない。」と思っていたらしく、一瞬
ギョッとした表情を見せました。


だって、ほんとに食べてないんだもん。


いいや、食べ終わったばっかりなんよ!


アタクシも、母の見当識が低下していること
を忘れてしまって、なんとか理解させようと
滔々と話をしてしまうのです。


今や、話す量は母よりもアタクシのほうが、
多いと存じます。


そして、母の話を途中で、ボッキリ折って、
アタクシが、頭ごなしに言葉を浴びせかける
ことが多ございます。


そうなると、母はついに、


その言いぐさだと、アタシが死ねばアナタは
自由になるというわけね。

と言い出すことになるのです。



両親のためにと家をリフォームしたご近所の
お爺さんが、たった20日間暮らしただけで、
あの世に旅立たれました。


肺気腫だったそうなのですが、血栓防止にと
飲んでいたワーファリン剤で、血が止まらず、
抜いて輸血してを繰り返していたそうです。


聞くと、お爺さんは、あまりに苦しいからと
もう、これ以上生きていたくないと自ら食事
を取らなくなり、亡くなられたそうです。



母がいつも言う、「死ねばいいんでしょ。」
は、本当に死にたいのではなく、逆なのかも
しれませんね。