45分前。

微妙に早過ぎるんだけど。30分前だとちっと
ばかり、足りない。

さあ、いつもの手書きのお泊りの予定表を、
母に見せて、アタクシは切り出しました。

いつもの入院治療が今日からやねん。
だから、その間、ここでお泊りしてや。

穏やかに、優しく。

しかし、やっぱり、母の顔が一転。
目が吊り上って、険しい表情に変わりました。

アナタ、病気はきちんと治してらっしゃい。
アタシ、ここで、寝ているから。

事なげな顔で言われると、もう、あきません。

「ここで寝ている」ことが、どうしてアカン
なのか、教えたろか!、と頭に血がのぼって
しまったアタクシ。

言っちゃいました。

アータは、認知症なんやって。
一人でいることは、アカンねん。
何かあっても、どうすることもできへんの!

いいじゃあない。ほっとけば、死んじゃうん
だもの。

そうか、虐待して親を殺したと、あたしが言わ
れてもええねんね。

黙ってればわからないでしょ。

階段から転落して、アザだらけになった親を
病院へ連れていったら、虐待を疑われたつう
ねん。なんでやと思う?
転げ落ちたことを忘れてしもたからや。

わかったわ。
アナタの言うとおりにすればいいんでしょ。


母は支度を始め、アタクシは、あらかじめ、
持っていくものを一式、準備してあったので、
母の目の前で、ひとつひとつ、見せながら、
バックに入れていきました。

支度が終わったのは、お迎え10分前。

あー、ちょっと、早過ぎました。
少し、待ってもらう感じがベストなんです。

何故って?

痰をひっきりなしに吐き出したからです。

母にとり、嫌なことなんでしょうね。
拒否反応。
ヒスタミンが過剰に活性化されて、痰を吐き
たくなるなるのでしょう。

お迎えの車が来たとなると、症状は収まって
借りてきた猫のようになって、出発しました。

024


本音はほっときたいです。
死んじゃうんでしょ。

どうぞ、お好きなように、でございます。