母の病室に入ってみると、ガランとした感じ
になっていました。

4人部屋にキツキツの6人が居たのが、真ん中
の糖尿病で寝たきりのお婆さんが転院されて
いました。

10日前に、娘さんがお婆さんに何回も何回も
噛んで含むように言ってましたっけ。

お母さん、うちは誰もお母さんの面倒を看る
ことが出来ないのよ。
だから、プロの人にお願いするから。

でも、お婆さんは、家に帰りたいだけを言う
だけ。

アタクシと同じように、頭ごなしに繰り返す
娘さん。

そのほかに、お嫁さんと思しき人や弟かなと
思う男性もいました。

○○ちゃんは?どうなの?

お婆さんは、母と同じように面倒を看てくれ
そうな名前を次々を挙げていました。

○○ちゃんも、××ちゃんも、仕事があるの。
お母さんの面倒をみたいけれど、できないの!

聞こえてくる内容の母娘のどちらの気持ちも
わかるので、アタクシは切なくなりました。

そして、母を病室から連れ出して聞かせない
ようにもしました。

まあ、その娘さんの声が、アタクシと同じで、
怒鳴り声的に大きいんざます。

耳の遠い年寄りを相手にしていると必然的に
大声になりますから。


お母さんは家に帰りたい、帰れなくてもこの
病院に居たい。

娘としては、3ヶ月にもなり、次をと言われる
のでしょうね。

医療型の病院を探しておられたようです。


空っぽのベットを見て、母が申しました。

この病室はお向かいの方と二人なの?

ちゃうよ。ママの隣の隣にいらっしゃるやろ。
だから、三人いるから大丈夫や。

あ、ほんとだ。

母は安心したようでした。

いつも顔が合うお婆さんが突然いなくなって、
不安になったようなのです。


お願いする老健は、多床室にしました。
一人っきりにするよりは、他人様がいる緊張
するほうが、母のためかと思うので。

いずれ、特養は個室ですが、病院で慣れた、
集団生活を続行し普段の生活に戻って欲しい
のです。
なーんて言うのは、表向きでございます。

それに個室にすると、有料老人ホーム並みの
金額になりますからね。

012


母が入院したとき、臨終から蘇った93歳の、
お向かいに寝ていたお婆さん。

流動食までに戻り、付き添っていた娘さんと
会話が出来るまで回復したのに、先日、亡く
なりました。

お互いに先が長そうだから、頑張りましょう
と声をかけあったのに。

やっぱりね、寂しゅうございます。