早く死にたいけれど、死ねないのよ。

これは、この頃の母がよく言うフレーズの一つ。


そのほかには、

アタシをここに放っておいていいのよ。

なーんて、申しますが、いざ、アタクシが、
帰ろうとすると、

アタシも帰る!!


そしてもう一つとしては、

アタシはアナタの迷惑になりたくないの。

いやいや、ここに居てくれはるのがいっちゃん、
助かるねん。

だってね、真夏のクソ暑い日が続くかと思えば、
急に涼しくなって、鼻水が出る日もあったんよ。

そういう気温変化のなかでも、ここだと快適な
室温になっている。

家で、快適な室温は出来へんねんよ。

体調を崩して、また、肺炎を起こして病院へ
となってかもしれへん。

ほんと、ここは快適よ。
病院には入りたくないもん。

でしょ、でしょ。だから、ここに居るのが、
ええねんでー。

おっかさん、わかってるやん。


こんな話をして、施設に居る意義を理解して
いるんだと思うのですが・・・。

あ、もう4時になったから、バスの時間や。
帰るね。

と、アタクシが言えば、やっぱり、

アタシも一緒に帰る!

だって、バスと電車やから、ママは歩かれへん。

アタシ、歩けるわよ!!

転んだら、また、入院することなるんよ。

それでもいいもん。


おっかさん、それじゃあ、支離滅裂っちゅう
もんやん。

この頃、アタクシ、平気でウソがつけるように
なりました。

明日は、ここでお医者様に診て貰う日やから、
ママはお泊りしてや。
あたし、明日、来るからね。

ウソこけ~、次の面会は2日後を予定している
のに。


毎回、こんなウソの会話をして母との面会を
終えます。

ワンコの大喜に見送られて、母のユニットの
出入り口の鍵をかけるその瞬間、アタクシは、
この上ない幸せを感じ、ルンルン気分になり
ます。

ユニットの出入り口は、ワンコ達が出ないよう、
常時、鍵をかけて出入りをしています。

動物のいない一般のユニットには、鍵があり
ません。念のため。

002


ルンルン気分は、そのときだけ。

家に帰り着く頃には、生気が吸われた感じで
クタクタになります。

面会に行ったのだから、もう、自分の時間だ
と割り切ることでしょうね。

でも、一晩経つと、なんとなく後ろめたさが
むっくりと頭をもたげてきます。