ミック君のお母さんは、認知症の症状はなく、
80歳代のお年寄りなりのボケ具合です。

しかし、関節リウマチのために、食器を手で
持って食べるのが難しい。

さらに、部屋で転倒し、右側を打って右手が
上に上がらなくなりました。

食事はスプーンを使っているのですが、それも
上手く使えない。

口に入れたつもりが、食べ物がポロリと出て
しまう。

すると、ミック君の目の前に座っているヒデコ
さんが、目敏く、口から落ちた食べ物を見付け、

ほら、胸のところに、食べ物が落ちてる。

すると、ミック君のお母さんは、あわてて、
不自由な手でそれを摘みあげてトレーに乗せる。

口の周りにご飯粒がつくと、これまた、あれ
これと、言う。


そのやり取りをほっとけばいいのに、母も、
お隣から、チョッカイを出す。

もっと食べやすくする方法ってないの?

母の声は大きな声ですから、スタッフさんにも
聞こえてしまう。

F子さん(ミック君のお母さんの名前)は、
リウマチで手が利かないのよね。
今は、転んでしまって、右手も使えなくなった
から、左手だけで食べなきゃならないのよ。

スタッフさんが説明すると、ヒデコさんも、
納得と大きく頷くのですが。


ミック君のお母さんが、また、食べ始めると、
ヒデコさん、またまた、ほら、そこにと言い
出しました。

アタクシが、横から、スタッフさんの説明を
繰り返すと、

そうだったのね。それは不自由だわ。


忘れてしまうのよね。
ミック君のお母さんが、不自由だということ。

母は、ミック君のお母さんの横に座っている
ので、気が付きません。

認知症のない方が施設で暮らしていくのも、
大変なことです。

でも、ミック君のお母さんもそういうこと、
よく御存じなんです。

仕方ないのよね。だって、一人では、何も
出来ないから・・・。

007

ミックを抱き上げることが出来ないという
ミック君のお母さん。

でも、夜、ミックはお母さんのベットの上で、
一緒に寝ているんだもの。

それだけでも、幸せというミック君のお母さん。