大きな声が食堂から聞こえてくる・・・。

腰の手術をして、コルセットを巻き、ゆっくり
歩いて食堂に来て、そこで食事をしている
ショウトウさん。

彼女の声です。良く響く大きなお声。

その朝、宿直の職員さんが食堂に食事を取りに
来れない校長先生のために居室まで運んでいました。

どうも、それが腹立たしいようで。

校長先生は、日頃、手押し車で動かれています。
読んで字の如く、彼女は神奈川県内にある、
有名カトリック女子校の校長を務めた方。

あの方はね、校長までやったんだから年金が
あたくしより多いはずよ。

なのに、あたくしが部屋から出られない状況だった
ときは、ショートステイに行かされたのよ。
不公平だわ。

ショウトウさんも、認知症の世界に片足が入って
しまって、同じことを数回繰り返します。

ケアハウスは人出不足で、昼食時の食事を運ぶ
のはやって下さるのですが、朝夕は難しい。

そこで、自分で運べない方は、一時的にショート
ステイに他の施設へ行くことになります。

実は校長先生は、元修道女で、修道院を出て、
一般の生活(還俗)に戻られています。

修道院に属している間、給与は個人宛でも、
個人のものではなく、修道院へ入っていたと
思われます。

だから、年金はそんなに高額ではないはず。
むしろ、ショウトウさんのほうが多いのでは
ないかと。

そう思っても、余計なことを言わないのがベスト。
アタクシも賢くなりましたので、黙っておりました。

ショウトウさん、ショートステイに出されるのは、
年金が豊かにあるからで、なければ、部屋で食事を
運んで貰うほか、ないんざんすのよ。

それに、年金額もそれぞれ、人生もそれぞれ、
一律ではございませんものね。

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